アルコール





二人きりの夜は、そのテーブルに酒の瓶を置く。
時に果実酒であり、時に蒸留酒であり。
いずれも独特の甘い芳香があり、疲れた体ごと心まで癒してくれる。
さほど酒に強くはなく、むしろ好んでは飲まなかった筈なのに、
ガダラルはいつしか部屋に常備しておくほど酒が好きになっていた。
ルガジーンの影響だと、それを言い訳にするものの、本当の理由は他にあった。



いつだったか、お節介の耳年増に聞いたのだが・・・。
「知ってる?アルコールは、最も手に入りやすい媚薬なのよ」


ルガジーンはそれを知ってか知らずか、ガダラルのグラスに酒を注ぐ。
こうして、会うたびに媚薬を盛られていたのでは、逃れる事などできぬな。
諦めた振りをして、目の前の男を会うたびに欲しがる、そんな自分もまた良いのではないか・・・。





ガダラルもまた、芳醇な香りを放つ"媚薬"をルガジーンのグラスに注ぐ。
「頬が赤いな」
「少し酔った・・・ふわふわする・・・」
「そろそろ、寝ようか」
「ん」



足元が少しおぼつかなくても、ルガジーンがベッドまで導いてくれる。
時に、抱き上げて。
胸の鼓動がいつもより早いのはアルコールのせいか。





考えなくとも、どうせ二人の鼓動はもうすぐ溶け合う。
アルコールを言い訳に乱れてしまえばいい。
見つめられながらゆっくりと重ねられる深い口付けは、酷く甘かった。