月光





疲労の残るからだをルガジーンに預け、彼の逞しい体に覆い被さる。
紅潮したままの頬をその胸に押し付けると、穏やかな心の音が聞こえた。
どうした?
と、言いたげにルガジーンはガダラルの髪をすくうと、
汗で湿ったそれは少し冷たく感じられる。



暗闇の部屋で一つの窓を開け放ち、月だけの光を頼ると、
まるでこの世にたった二人切りになってしまったような、
ほんの少しの心細さと、独占欲がガダラルを満たす。
男の鎖骨に唇を寄せ、ちゅ、と音を立てて吸う。
皮膚の薄いところは感じる、と思うのだけど・・・。
ルガジーンは何事も無かったようにガダラルを見た。



その金色の目を覗く。
今日の月の明りは青白いのに、男の目は宝珠のように輝いていた。



思えば、何故この男は汚れないのだろう。
男を抱き、蛮族どもを忠義の名に殺し。



なのに何故、この男は高潔なままなのだろう。





「綺麗な男だな・・・」
「?・・・私がか?」
吃驚して、少し大きな声を出すと、ガダラルは溜息を吐き。
「・・・たましいの美しさの話だ」
呆ける男の右肩をつねった。