薔薇





たまに白門で休憩をとるのも良かろうとの
ルガジーンの提案で、二人はささやかな密会を楽しむ。

茶屋に来ていた客たちは、将軍同士の
勿論滅多に見られない穏やかな表情で茶を楽しむ姿に見入っていた。

女性達はあからさまにステキね、と囁き合い、
老人はこの街を守る守護者に遠くから頭を下げた。

かえって目立つではないか、とぶすくれるガダラルではある。
 

気がつくと少女が二人のテーブルの側に来ていた。

実は二人とも子供は嫌いではない。けたたましくも愛らしい。

「どうかしたかな?お嬢さん」

ルガジーンの優しい声に少女はぱっと、笑顔になり

「うんとね、ママがね、お花屋さんなの」

と、可愛らしいマーガレットの花束を差し出した。

少女に持てる量などたかが知れている。けれど、その心遣いは良く伝わった。

「やあ、これは綺麗だな。ありがとう。ママにも宜しくと伝えてください。小さなレディ」

ルガジーンはお茶請けにしていた砂糖菓子を
いくつかペーパーナプキンに包むと少女に渡し、頭を撫でてやった。

「えへ!」

手を振って家へと戻る少女に、ついガダラルも手を振った。

 

「愛らしい事だな」

ずず、と今日は珍しくコーヒーを飲み、ルガジーンが自分を見つめていることに気付く。

「・・・なんだ?」

「マーガレット、可愛らしい花だが」

「?」

「残念ながら美しい薔薇のような貴殿の前では霞んでしまう」

 

ガダラルはこの男のキザなセリフもまあ、慣れているので

「貴様の脳は酷く膿んでいるようだな」

苦笑した。