なぜ?なぜあなたは。
なぜあなたは武器を持つの。

「わたしもあなたも後方支援。なのになぜ、あなたは武器を振るうの」
「なぜ、とは?」
「矛盾してるでしょうけど、わたしは肉を断つ感触が好きではありません。狩人はその点、楽。
 敵を殺めてもその死は手には伝わらないから。黒魔道士も、皆、そうだと思っていました」
「・・・フン・・・」
「また、『くだらぬ』と、お思い?」
「特に理由など無い」
「・・・そう・・・。なら、わたしもナイフを持ちます。
 そうすれば、きっとあなたの気持ちが解るでしょうから」
「なぜ知りたがる?」
「仲間だから」
「・・・」
「ルガジーン様にお声を掛けていただいて仲間になった。ただ、それだけ」

 

「・・・命を奪うのは罪な事だ」
「・・・え・・・ええ・・・」
「その罪をリアルに感じる事が出来る。手から腕へ。腕から脳へ。生きている実感を味わえる」
「・・・なんて・・・」
「罪を感じ、それが死んでいった奴、殺した奴への弔いになると・・・などとは虫の良すぎる話か」

炎蛇将は、そう言って相変わらず不機嫌そうに眉をひそめ、また黙り込んでしまった。
愚かな質問をしてしまったのでしょうね。
ただ、この人と五蛇将として上手くやっていく自信が無く、
彼を少しでも知りたいと、そう思っただけ。

足音が聞こえ、同時に振り返る。
「ガダラル、ナジュリス。珍しいな、二人か」
「え、ええ、ルガジーン様。炎さまとお話を」
「様付けは辞めてくれと、あれほど・・・」
少し困ったように微笑むルガジーン様。私たちの長、この街の守護神。
そのあなたを呼び捨てなど、出来ましょうか。
そう耳打ちしようと、隣の炎蛇将を見ると、
彼の顔は少し穏やかにルガジーン様を見つめ、目を反らした。
その仕草が少し、いじらしく。

ああ、わたし、気付いてしまったのね。